採点の苦労はいつもながら   2013.9.2 
  

今日が成績発表の日だと学生から聞いていたが、それにしては静かだ。いつも成績発表日にはキャンパスが
学生で溢れかえって、夏休み中にも関わらず突然賑やかになるのだけど...。学生が少ないのは雨だから?
人に依ると思うが私の場合、授業は進行と共にだんだん苦痛が増してくる。授業をしている時が一番良くて、
試験問題を作るのは授業に比べると余り面白くない。そして試験監督はむしろ苦痛で、最後の採点が業苦だ。
学生にそう言うと「私が代わりに採点してあげます」と。「“全員に満点”とかつけるだろうから駄目」と言えば、
「満点は自分だけにするから大丈夫です」などと宣うたりする。
時々どうしても得点を換算しなければならないことがある。簡単に言えば「下駄を履かせる」と言う事なのだが、
今回ある授業で、試験問題を作っている段階から下駄を履かせる前提にせざるを得ない出題になった。
「この問題では相当下駄を履かせなければならなくなる」と思って問題を変えて見るが、どのように工夫しても
半分以上が不合格になりそうな問題になってしまう。
試験問題は直前まで作らないようにしている。着任して間もない時期に泥棒が入った経験からそうしている。
金目のものがなかったためか、泥棒は何も盗みはしなかったが、試験問題の保管場所を開けたから作り直しに。
用意周到に試験問題を作っておくと、それだけリスクが高くなることに気づいた。
そんなわけで直前に試験問題を作っているから、そんなにゆっくり時間を掛ける余裕はなく、
適当なところで手を打つしかなくなって来る。ある時点で「これは得点調整を前提にせざるを得ないな」と判断。
舞台裏を知らない学生は自分の出来具合に「落ちた」と思うだろうな。
建前から言えば、絶対評価なのだから大多数が不合格になることもあり得る。実際そう言う場合も少なくない。
何が違うのかと言うと、出題内容によって点数が低いのか、学生の勉強が足りないのか、どちらなのか、と言う点。
後者であれば仮に半分以上の受講生が不合格になったとしても得点調整すべきでないが、前者の場合はむしろ、
調整しなければならない。
同じように時として受講者全員が高得点になることがある。その場合には部外者から不真面目な採点を疑われる。
見栄え良く適当に点数を下げたくなるのだけれども、特別に易しい出題だったとかの理由がない限り、
そのまま成績を付けるべきだ。このような状況が発生するのは、大概クラス全体の雰囲気が真面目になった時で、
学生が全員よく勉強したからである。
クラスの雰囲気というのは思いの外に影響が大きいもので、同じ授業でも年によって全然違った得点分布になる。
かつては心配になって前年の答案を調べたりしていた。「評価基準がぶれた結果でない」ことを確かめて安心する。
逆に言うと学生はクラスの雰囲気から結構影響を受けているのだ。
さて採点自体も甘く付けたが、素点のままでは半分以上が不合格だ。それは全く予想通りだが自慢にもならない。
仕方がないから点数を換算することにする。最高点が低い場合は全体に下駄を履かせるのが一般的だ。
けれども今回はその方法では最高点が100点を大幅に超えてしまう。
そういう時にはこれまで、一次式の換算式を作ったり、それを領域毎に分けてみたり、時には換算表を作ったり、
その都度、様々な方法で対処してきた。その度に思ったのは「本当は滑らかな曲線の換算式の方が良いのだけど」
けれども割と面倒な計算になるので、結局曲線の換算式は作らずに、その時々泥縄式に対処してきた。
今回ついに換算式を作って見たのだが、まず前提として次のような条件が欲しい。
1. 点数の順序が入れ替わってはならない。
2. 接線の傾き(微分係数)が単調減少(or増加)関数になるべきである。(恣意的にならないため)
3. 大幅な得点調整でも破綻しない。(そういう時こそ換算式の出番だ)
これらの条件を満たすには、例えば x 2 で作る曲線(放物線)などは対象外になる。候補としては、双曲線か、
あるいは指数関数・対数関数辺りが思い浮かぶ。けれどもどの関数も暗算で計算するには難しすぎる。
そうして避けてきた計算だが、今回は思い切ってやってみた。
数式処理ソフトを普段から使っていれば一発で簡単にできるはずだが、使い方から調べていたら逆に手間だ。
そこで原始的に紙に手計算した。
  結果表示
次から10行ほどの説明は、上の「結果表示」を見ながらでないと意味不明と思います。まずはクリックして下さい。
3つのgivenな点は入れ替えても同じ筈だから、入れ替えに対して a, b, c は変化しないように対称になっている。
最初はそうならず、簡単な場合を検算したら合わない場合があった。勘違いで消去していた項があった。
計算途中では非対称になり、結果を対称形に式変形する必要がある。だから非対称でも間違いとは限らない。
「そのせいかもしれない」と思いつつも調べたら間違いがあったと言うわけだ。
間違いチェックのために今度は対称形に変形してみた。次元解析もOKだし、特定の点数を代入した結果もOK。
多分もう大丈夫だと思うけれど、もしこの式を利用する場合は自己責任でお願いします。
3つのgivenな点の与え方によっては使えない。それは次のような場合である。
1. 直線に換算する場合。→ a, b, c は無限大に発散する。(素直に1次式を使うべし)
2. あり得ないと思うが、中間得点者の換算点を最高又は最低にした場合。→ 素点の変域内に発散点が生じる。
この式を使って点数を下げる方向に調整することも可能だ。そう言う必要性が発生することは稀だとは思うが、
経験的に言うと全くないことではない。
これで採点が楽になる、なら良いが、ほとんど関係ない。得点分布で悩むこと自体が元々それ程多くはないし、
手間を省くことではなく、得点調整に恣意的要素が入らないのが眼目だ。

(写真について) 泰山木の花を撮影していたら、ミツバチがやってきた。色からすると多分セイヨウミツバチ。
慌ててシャッターを切った。大きな花に小さな虫だから点に見える。
泰山木もモクレン科。最初に書いた話題を思い出す。彼女らもモクレン類の花粉を運ぶのだろうか?
動き回ってピントが合わない。花の前でホバリングする時間も短い。花に止まっているところでは面白くないので、
ホバリングしているところを撮影したいと思ったが、この時もすぐに花弁に止まったり花の反対側に行ってしまい、
ホバリング中に撮影できたのはこの1枚だけだった。


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