実生木蓮の花 - 新品種?   2013.4.10

かれこれ十年位前になるが、白木蓮が珍しく結実していたので種を取って蒔いてみた。
白木蓮は中国原産だからだろうか、あるいはそのため花粉を媒介する昆虫が
日本に居ないのか、実が膨らむ初期段階で大概落ちてしまう。
雌蕊先熟と言って、雄しべが花粉を作るときには雌しべは既に受粉能力がない。
それで自家受粉を防ぐのだが、受粉するためには自分より先に咲く木が近くに必要だ。
白木蓮の開花は早いから、その点からも昆虫の活動の点からも不利になっている。
信憑性の程は分からないが、木蓮類の花粉を媒介するのはハエなのだそうだ。
ハエなら春先早くから活動するから、と言うのもあろうが、理由はそれだけではない。
匂いに惹かれたハエが入り込むと、真上にしか出口が無くて外に出るのに苦労するから、
花の中で七転八倒する内に花粉まみれになって出て行く、と言う仕掛けだとか。
花粉まみれになって必死なハエを想像すると、ハエには悪いが微笑ましいと思ってしまう。
そう言われて見れば確かに、芳香と言っても木蓮の芳香は熟し切ったような香りで、
ハエに対するアピールはありそうな感じがする。
花の構造はチューリップも同じだけど、チューリップもハエ狙いなのだろうか?
植物進化の歴史の中で木蓮は最も古く出現した虫媒花なので、
その当時は蜂や蝶と言った「花の蜜を利用する昆虫」は居ないはずで、
話が合うようだけど、ハエも蜂と同等以上に進化した仲間なので出現は遅いはず。
最初はハエではなく甲虫の腐食質を食べるような連中なんかが相手だったかも知れない。
いずれにしても木蓮の花粉媒介作戦が突破口になって、現在我々が目にするような
「蜜をなめる多くの昆虫達と綺麗な花々」の世界が出現したのかと思うと感慨を覚えます。

    
さて、その種から発芽した幼木を長いこと育ててきて、この春ついに一輪の花を咲かせたのだ。
(咲いたのは先月で、4月になってこれを書いている)
もちろん花粉親は分からない。だから変わった花が咲くかも知れない、
と少し期待したのだけど、ご覧の通り普通の白木蓮が咲いた。
この花は少し小さめなので、鉢植えに使えるかも知れない。
形は丸弁で垂れ下がらないのが好きなので、そこは個人的に言うとドンピシャなんだけど、
特筆するほどの取り柄ではない。
もし今後「船越更紗(品種名)」みたいに側芽にもびっしり咲くようになったら、
なんて言う事はほぼ100%ないだろう。
花弁が濡れているのは前日からの暴風雨の仕業です。
それにも関わらず花弁が痛んでいないは、ひとつには家の壁に近いことに助けられたのだろうけど、
花の小ささも貢献したのだろうか? 風の強い季節に咲くだけに頑丈なのは美点だ。
以前から白木蓮の盆栽は作りたいと思っているので、もう少し様子を見て、
良さそうだったらこれを仕立てることにしようか。

ついでにもうひとつ、今年お初の花について。下写真の石楠花も今年初めて咲いた。
今まで咲かなかったのに、今年はいきなりほとんど全ての枝先に花芽がついて、壮麗見事な様だ。
写真の右端にもこれから咲く蕾が写っていて、この写真の範囲だけでも合計3つの花冠!

    
園芸店で売られていた「太陽」という品種で、石楠花としては強健で、
平地の夏の暑い環境に耐える点が長所とのことだった。
「その代わり容易には咲かないのかな」と思い始めていたところに、突如風向きが代わったようだ。
いや風向きではなくて、彼(彼女?)の生理状態が変わったのだ。
その変化が生命力を落とすようなものでないことを願う。植物は枯死の近いことを自ら察知して、
子孫を残すために異常に多くの花を咲かすことがあるから不安だ。今夏が試金石になるだろう。
強健を謳う石楠花の品種は他にもあるが、花の色彩に変化が乏しく、みな似通っているのが難点だ。
所謂ミニ石楠花まで含めての話だが、石楠花全体では黄色から青色まであらゆる系統の色が揃う。
ところが耐暑性がなくて、平地のしかも九州となると植栽が難しい。
この耐暑性の問題を克服した時に、今度は花色のバリエーションが失われたのだろうか?
とは言うものの「本家本元石楠花」の豪華さは、確かに失われていない。あっぱれ!

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