周縁学   〈九州/ヨーロッパ〉の近代を掘る
   

    昭和堂 2010年3月31日 340ページ 定価2,600円(税別)
    ISBN978-4-8122-1007-9
    編者 : 木原 誠, 吉岡剛彦, 高橋良輔
    執筆者 : 鬼嶋 淳, 後藤正英, 中村 聡, 相野 毅
    シンポジウム執筆者
     佐木隆三, 荻野喜弘, 板井八重子, 久保井摂, 田村栄子, 色鍋島十四代今泉今右衛門,
     京極夏彦, 波平恵美子, 尾形希和子

事象の本質はその中心にではなく、物事と物事の関係性、つまり「周縁」の中で捉えられるのではないか。
物事の周縁に目を向けて到達する新たな認識を、様々な学問領域の中に見出す試み。

本書の位置づけ
2009年夏に佐賀大学で国際文化学会が開かれたときに、通常の学会発表とは別に、
二日間に亘る大がかりな一般人向けのシンポジウムが開かれました。
一日目の佐木隆三氏、二日目の京極夏彦氏を初めとする豪華な顔ぶれで、
会場は超満員になりました。
本書はそれを書物の形に定着させようとしたものです。
シンポジウムの語り手の9人による文章に対して、
学術的基礎付けを目指して書いたのが、上記編者と執筆者7人による論考です。
その中の一人に私が入っています。

各章の担当者
序章 周縁的思考-うらがえす知のたくらみ (木原 誠, 高橋良輔)
第一幕 礫の気骨
シンポジウム 九州の闇を掘る
 官営八幡製鉄所の大ストライキ一九二〇年 (佐木隆三)
 地底からのメッセージ (荻野喜弘)
 水俣 胎児との約束 (板井八重子)
 被害を語るということ-ハンセン病違憲国賠訴訟の経験から (久保井摂)
 コメント 世界/日本/九州の近現代史における製鉄・炭鉱・水俣病・ハンセン病 (田村栄子)
 討論 (司会:鬼嶋 淳)
論考 周縁学のポリティクス~社会の巻~
 第一章 朝鮮戦争期日本社会の周縁-「九州の闇」を歴史的に考えるために (鬼嶋 淳)
 第二章 他文化主義と周縁化-うらがえる包摂と排除 (高橋良輔)
 第三章 人間と動物の境界-人間中心主義とその周縁 (後藤正英)
 第四章 自然の周縁-裏側から見た里山論 (中村 聡)
第二幕 土の記憶
シンポジウム 陰影のなかの文化
 伝統のもつ〈継承〉の意味について (色鍋島十四代今泉今右衛門)
 概念としての〈土〉-土着、土俗 (京極夏彦)
 土、それは意味の豊かなもの (波平恵美子)
 「土」と「大地」の概念とその表象-西洋中世美術を中心に (尾形希和子)
 討論 (司会:相野 毅)
論考 周縁学のポエティクス~文化の巻~
 第一章 周縁の詩魂/煉獄の記憶-アイルランドの地霊が宿る場所 (木原 誠)
 第二章 周縁のカップル-フランス一九世紀末の「女優」と「独裁者」 (相野 毅)
 第三章 生きている〈遺体〉と、目玉焼き-氏の周縁をめぐる法・科学・風俗 (吉岡剛彦)

第一幕 第四章 自然の周縁-裏側から見た里山論 (担当部分) の目次
豊かな自然とは
 自発性への臆見、生物多様度
里山の生物多様性
 手強い現実、意外な調査結果、
里山由来生物の絶滅危惧化
 絶滅危惧種の分布状況、他の生物たちの境遇
自然の周縁
参考文献

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