海上知明氏の新著 新・環境思想論 二十一世紀型エコロジーのすすめ |
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拙著の出版後に存在を知った書物の中で、言及しなかったことを一番悔やんだのがこの本。
簡単に内容を紹介しておこう。
前半で述べているのは西洋思想と現代文明について。
自然克服の西洋思想は、環境問題の発生要因を内在させていたのではないか、と言う点。
拙著との関係で特筆すべき点は、むしろ後半にある。
まず前半から分かるのは、どうやら海上も「自然と人間の二項対立」図式に疑念を抱いた、
と受け止められるのだが、その限界を克服する思想の拠り所として、
後半で日本の思想家と里山に注目している。
自然克服でもなければ人間不在の原野思想でもない「自然から価値を得る思想」の構築、
それが今後目指すべき環境思想なのだと言う。
これは拙著の考えた方向性と相当程度まで共通している。
もちろん中身を見れば違いは多々あるのだが、方向性が一致しているのだ。
海上の古い方の書物『環境思想 歴史と体系』は拙著に紹介したのだが、
そこには彼の新しい思想は片鱗も見えなかった。
そのため拙著の海上に対する記述は、大変偏ったものになってしまっていた。
彼にも失礼であるし、知らずに拙著を読む人には誤解を与える。それゆえかなり後悔したのだ。
後日談的に言うと、海上氏とはその後個人的に意見交換ができた。
失礼にも関わらず私の落ち度に対して寛容な彼には、大変感謝している。
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