合宿研修に行きました。
2013.6.4
先日の合宿研修について中村の視点から報告します。下の写真は宿舎の食堂の壁に掲げてあった
巨大なヘラクレスオオカブトの模型。写真の下端に調理師の白帽頭が写っているので比べて下さい。
カウンターのすぐ向こう側でこちら向きに立って、下を見て何か作業しているんだけど、分かるかな。
赤い襟が白衣の肩とのコントラストで少し目立つので、それを目印にしたらいいかも知れない。
本当にこんなのがいたら怖いけど、実際問題このサイズであの脚の太さじゃ身体が持ち上がらない筈、
なんて身も蓋もない生物界の法則をひとりの学生に話しちゃった。
今年は私が計画した。宿舎は北山少年自然の家だったが、これは二重の意味で例年と違っている。
ひとつは佐賀県内で非常に近場であること。おまけに見学場所まで県内で揃えてしまった。
もうひとつは久しぶりに少年自然の家を利用してみたことなのだが、これはいくらか冒険だった。
ここ数年は島原と九重にある九州地方の大学共同の宿泊研修施設を、交互に利用してきている。
この2箇所しかないから交互になるのだが、少年自然の家とか青年の家とかなら沢山あるわけで、
佐賀県内でも北山以外にもう2箇所、北部九州では何カ所あるか数えたこともない。
けれどもそう言う施設はこれまで利用して良い思いをした事がなかったから避けていたのだ。
朝の集いと夕べの集い、ラジオ体操や国旗掲揚とか、義務である理由が大学生には納得できない。
元来は小学生を念頭にした施設だから、大学生の実情に合わないのは仕方がない面もあるが、
自分で考える習慣を奪うような「軍隊式」は、大学的視点では反教育的でさえあるのだ。
以前山口県にある油谷青少年自然の家を利用したときの出来事だった。今はどうか分からないが、
当時はこの施設は非常に厳しく引き締めていた。殊にハンサムなお兄さんが万事に目を光らせる。
上級生の女子が妙な言い訳を彼のために用意してあげていて、可笑しいやら呆れるやら...。
一年生達もそのお兄さんに全否定され続けていたのだが、一度だけ彼を黙らせてしまった。
自由時間に勝手に自然の家の敷地でゴミ拾いをして、集めたゴミを持って指示を求めて来た。
勝手にやったのだからそれまでの経緯からすると叱るしかないのだが、その行為は良いことなので、
叱ることができない。「あっ、...」とバツが悪そうにゴミ置き場を指示した彼の顔が忘れられない。
「学生がやることは悪いに決まっている」という前提で言ってきたことが崩れてしまった瞬間だった。
ゴミ拾いをした一年生達の行動の裏には、「自分の判断で行動する」という規範があったわけで、
もしかしたら「環境を学ぶ学生として貢献できることは何か」真面目に考えた結果だったかも知れない。
全て指示通りに行動させていたのではそう言う能力は育たないし、むしろ考える習慣を奪ってしまう。
それが反教育的と考える私の理由だ。
北山湖ではボートを漕いだ(自由参加)
学生が撮影。バスの室内灯か何かだと思う。
はて、これは新芸術? 何だか綺麗ではある。
そうした経験があるにも関わらず、今回久しぶりに少年自然の家を利用してみようを思ったのは、
卒業生からの情報だった。彼は元々NPOに就職したのだが、去年だったかそのNPOが初めて、
北山少年自然の家の運営についての委託を受けた。それは行政としては改革の試みなのだそうで、
彼のNPOとしては是非とも結果を残して、能力のあることを示したいと考えているわけだ。
その改革の一環として「軍隊式」から徐々に脱却することも考えていると言う話を彼から聞いていた。
それなら試しに利用してみようか。そう言う経緯だった。
さてその結果だが、ほぼストレス無く利用できた。確かに卒業生が言うように細かい決まり事が減った。
締め付けが厳しくないだけ、学生の不平もほぼ皆無と言って良い状態で、その点が非常に助かった。
細かく見ると、今回はいろいろと有利な条件もあった。
1. 他団体も含めて大学生ばかりだったため、臨機応変に大学生向きに調整できたそうだ。
2. 二日目が雨になって朝の集いが体育館になり、国旗掲揚がなくなった。
幸運もあったのは間違いないが、NPOが運営を引き受けた事による目に見えない効果も大きいと感じた。
それは帰りのバスでの小野先生の言葉に表れている。
「歓迎して貰って気持ち良く過ごせた。」
そうなのだ。考えてみるとこれまでの自然の家では、「宿泊させて教育してやる」と言う雰囲気だったのが、
今回は「利用して下さり、ありがとうございます」と言う気持ちが前面に出ているのを感じた。
言葉だけなら昔も同じように言われたはずだが、態度でそれを示して貰った点が今回一番違った部分だ。
態度は記録には残らないが大きい。
ラジオ体操はあったのだけれど、そして「行かなくて良いでしょ」と言って学生は嫌がっていたのだけど、
後から聞いたら「面白かった」のだそうだ。そう、同じことを要求しても職員の態度が違うと感じ方が違う。
当然と言えば当然だが、結局それがもてなしの本質なのだと思う。
最後の見学施設はチャイナ・オン・ザ・パーク
何も買わない団体なのに、展示品の説明をして
くださり、その話が私には結構興味深かった。
そういう訳で今までにない経験になったのだけど、それを感じているのはどうやら我々教員だけのようだ。
それもその筈、なのかも知れない。学生は「それが普通」だと思っているのだから。
今回参加した中に4年生もいたけれど、彼女が入学するより前から大学の共同研修施設ばかり使ってきた。
だから学生は誰も分からないとしても仕方がないが、一緒に行動しながら共有できないのは寂しいものだ。
今後どうするかは考えていないが、やはり宿舎が2箇所しかないのはやりにくいので、多角化できれば有難い。
北山は近場なので途中経路が短く、見学場所に苦労した。北山少年自然の家だけが改革中なのだとすると、
状況はそれ程改善しないことになるが、他の自然の家がどうなっているのか知るのは難しそうだ。
北山には内情を聞くことのできる卒業生が居たから、利用してみる判断ができた。他の施設を使うとなると、
これと言った情報がないのが実情だ。委託運営をしているかどうか程度なら調べられそうだが、実質について、
つまり「もてなしの態度があるか」と言うようなことを調べる術があるとしたら、その方が不思議だ。
試しに利用してみるには施設が多すぎて、どこを試すのが良いのか迷う。合宿研修は年に一度しかないから、
順番に試して見たとしても、良い施設を見つけるまでに何年かかるのやら。それでは振り出しに戻ってしまう。
北山が変わったように、他の自然の家も改革に乗り出すかも知れないから、古い情報は余り参考にならない。
それに結局こういうことは人間なので、職員が変われば雰囲気も変わるはずだ。
宿舎以外にも今回初めての試みとして、1日目に登山を持って来るようにしてみた。日程さえ許せば良い方法だ。
雨なら翌日の見学場所と交換、学生は徹夜する前だから体力充実。しかし今回の登山は体力不必要だった。
標高差150m程で、距離も1km以下。例年と比べたらごく軽いものだ。小学生の遠足と比べたら? ...恥ずかしい!
けれども当初学生はこれを嫌がっていた。一番嫌がっていた学生に、登った後で聞いたら「楽ちんだった」。
九電の施設も2箇所訪ねたが、人力で発電してヘロヘロにくたびれるのが学生は大好き。本当はヤワじゃない。
山頂で高島先生に岩石について説明して貰ったら、下山路はみんな「にわか地質学者」。影響されやすいよね。
自分も石を拾ったから学生のことは言えないんだけど...。
更に1日目の最後が北山湖だった。これらの1日目の野外活動を利用して、夜の室内研修も工夫してみた。
昼間の内に木の枝を採集して貰う。それを夜の研修で調べて、5種類の枝を正解した人には景品を用意した。
正解する目標は5種類だが、図鑑に載っていなかったりするのでもっと多めに採集しておくのが得策である。
図鑑などの道具類は私一人で持てる量でなかったが、バスに運び入れたり、運搬は学生に手伝って貰った。
木の枝の種類を調べているところ
結果的には2-3種類当てられればまずまずと言った調子だった。イロハモミジとヤマツツジの正解率が高かった。
前者は分布を利用して良いルールに助けられている面もある。後者は花が付いていたから判断材料が多かった。
図鑑に花の写真がなければ意味ないが、これは載っていた。もちろん人によって集めてきた枝の種類は違うから、
これらを皆が持っていたわけではなく、有利/不利がある。そこまで含めて学生にとっては作戦なのだ。
ミズナラとコナラを区別できない人が多かった。図鑑には区別方法が記されているのだが、難しかったようだ。
まあ簡単に雑種ができてしまうような間柄だから、と言えなくもないが、現物はそんな紛らわしくなかったのに何故?
時間内には結局「出来たので見て下さい」の手が上がらない人も少なくなかった。
景品は大学生協の商品券にした。何人正解するか分からないので様々な数字で割りきれるように12枚用意した。
最終的に5種類正解に辿り着いたのは2人だったので、商品券6枚ずつということになった。その内の1人が1年生。
彼女は次のサイコロゲームでも最高額のカードを当てて、今回の合宿研修の費用をほとんど回収してしまった。
いやいや、例年だと帰ってから後援会から補助金が出るし、食事代とか普段から必要な経費を除外して計算したら、
かなり儲かってしまった筈。おめでとう。先輩達に脅し取られないようにね!!!
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