予想以上の出来映え 
 -三脚のハンドルが崩壊した-  2013.10.14
 

ごく気楽な話題だ。三脚のカメラを載せる部分を「雲台」と言うが、雲台には通常2本のハンドルが付いている。
それぞれカメラを前後方向と左右方向に傾けて必要な角度に固定するためのものだ。
大概前者の方が大きなハンドルで、後者はそれより小さいハンドル、と言うように差を付けてあるが、理由は知らない。
それらのハンドルがボロボロと崩壊してしまったのだ。
経験のある人も居るのではないだろうか? 古いプラスチックの表面に液体が浸み出してきてベトベトしてくる。
そうなると手が汚れるから触りたくなくなるが、この時はハンドルに紙などを巻いて使い続けた。
けれども液体が浸み出すと同時に、プラスチック自体がボロボロと崩れやすくなって、一年ほどしたらボロリと
大きく欠けてしまった。こうなるともう使い物にならない。
しかしこの三脚はお気に入りだった。開脚角度の調節方法が独特で優れている。だから同じ三脚を2本持っていた。
そもそも安い三脚では開脚角度が調節できないものが多いから、意味が分からない人もいるだろう。
3本の脚を通常よりも大きく広げると、雲台の位置が下がって低い位置から撮影できるようになる (下模式図参照)。
  
模式図の左側が通常として、右側のように脚を広げれば撮影位置を低く取れるようになる、という仕組みである。
私の場合、割と花や昆虫の撮影が多いので、このような開脚機能は必須条件と言って良い。
屋外では平らでない地面に設置することも多いので、3本の脚の開脚角度はそれぞれ別々に調節できる。
けれども普通の高級三脚に採用されている方式では、開脚角度自体は3段階に調節できるだけで、
その途中の角度に固定することが出来ない。ところが“お気に入りの三脚”では、もちろん3本を別々に調節できて、
更に無段階に自由な角度で脚を固定できるような仕掛けになっていた。
この三脚は高級三脚ではないのに...。
「大変良い方式だから高級三脚に採用して欲しい」とメーカーにメールしたが、「参考にさせていただきます」とだけ。
結局この三脚も生産中止になってしまった。
そう言う訳で特に大切な三脚だったから、ハンドルが駄目になったと言うだけでは、捨ててしまうことが出来なかった。
そこでハンドルを作り直そうと考えたわけである。
高級三脚でない点が実は悩みの種でもあった。高級三脚では三脚本体と雲台を別々に買って組み合わせることも多い。
だから雲台だけ買っても良いのだが、この“お気に入り三脚”は安価な小さめの三脚なので、その大きさに見合った
小さめの雲台が単独ではあまり売られていないのだ。
初めは迷った。作り直すためには今残っている欠けたハンドルのプラスチック部分を完全に壊さなければならない。
そうすると「だましだまし使うこと」も出来なくなる。「もしやってみて駄目だったら、少しでも良さそうな雲台を探そう。」
思い切って作業に入った。
まず残りのプラスチックを金槌で叩いて内部の金属棒だけにした。すると金属棒にはツバのようなものが出ていて、
それとプラスチックが噛み合って滑らない仕組みになっていた。それをそのまま使うとしよう。
100円均一で長さ10cm直径3cmほどの円筒形の木材が4本入ったものがあるのだが、これを買ってきて削るとしよう。
まず小さめのハンドルのために1本は半分に切る。大きめのハンドルにはそのまま使うことにする。
それらの中心に金属棒と同じ太さの穴をドリルで開けて、金属棒を金槌で叩き込めば、木片と金属棒が合体する。
金属棒のネジの部分をボール盤に差し込んで回転させ、木片にヤスリを当てれば回転体の形に削れる、と言う算段だ。
その後、下地塗装をした段階が上の写真の左側、更に黒く塗装したのが右側。
なかなか良い出来映えである。握った感触も良いし、あたかも最初からこのハンドルが付いていたかのように見える。
金属棒を打ち込んだときの“ツバの通った跡”を下地塗装の塗料で埋めようとして、塗料を沢山流し込んだ。
するとなかなか乾燥しなくなって、暫く屋外に放置したら金属棒が錆びてしまった。錆はある程度削ったが完全ではない。
それに小さいハンドルの内の一本を少し削りすぎてしまって細くなったため、握って回すときに余分に握力を必要とする。
その辺りが小さな失敗ではあるが、半ばダメ元だった割には良すぎる出来映えだ。
上記のような方法は聞いたことがない。それで巧くいくはずだと考えたが、普通なら回転体に削るためには旋盤を使う。
旋盤を持っていなかったからボール盤で回した。素直に旋盤を借りれば良いのに。それ以前に「時々欲しくなるのだから
さっさと買えば良い。」 常々思っているが今回も旋盤無しで解決してしまった。


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